はじめに
婚約破棄。
それは、僕にとって、人生で一番苦しく、そして、
自分という存在が崩れていくような別れでした。
あのとき、
「なぜこんなことになったのか」
「何を間違えたのか」
何度も自分を責め、
何度も未来が見えなくなりました。
けれど──
時間が経った今、少しずつ、わかってきたんです。
あれは、ただの“失敗”じゃなかった。
ただの“終わり”でもなかった。
あの別れは、
僕の魂が、本当の愛とは何かを学ぼうとした“通過点”だった。
「愛するとは何か」
「信じるとは何か」
「自分を生きるとは何か」
すべてをゼロから問い直すために、
魂が僕に差し出した、大きな、大きな課題だったのかもしれない。
このストーリーは、
そんな僕の「痛み」と「気づき」の記録です。
もしあなたが今、愛に迷ったり、傷ついたりしているなら──
ほんの少しでも、この言葉があなたの心に寄り添えたらうれしいです。
結婚相談所で出会い、成婚、そして破談へ
結婚相談所を通じて、
僕は、ある一人の女性と出会いました。
プロフィールの文字だけではわからなかった温かさ。
会話の端々に感じた、素朴な優しさ。
「この人となら、穏やかに歩いていけるかもしれない」──
そんな直感を、僕は信じた。
お見合い、交際、真剣交際へと進み、
互いに「この人と生きていきたい」と確かめ合い、成婚退会。
それは、誰が見ても「幸せの形」だったはずでした。
けれど、婚約という名の“現実”が始まると、
少しずつ、小さなすれ違いが積み重なり始めました。
選びたい未来に対する温度差。
家族や価値観に対する微妙な違和感。
ふとした言葉に生まれる、不安と孤独。
最初は、「きっと乗り越えられる」と思っていた。
でも気づけば、心に広がる距離を埋めることができなくなっていた。
──そして、破談。
目の前からすべてが崩れ去ったわけじゃない。
けれど、
心の奥で信じていたものが、音もなく壊れていく感覚。
誰にも説明できない感情と、
誰にも相談できない痛みを抱えながら、
僕は、ひとり静かに、自分自身を失っていった。
心が壊れかけたとき、魂に問いかけた
失って初めて、気づいたことがある。
僕が本当に欲しかったもの──
それは、「愛されること」でも、「誰かに認められること」でもなかった。
安心だった。
ただ、
「このままの自分でいていい」
そう思える場所。
無理に笑わなくても、頑張らなくても、
静かに呼吸できるような場所を、
ずっと心のどこかで探していたのかもしれない。
でも、本当はわかっていた。
それは、誰かに与えてもらうものじゃない。
自分の内側に、築き上げていくものだった。
愛されることで安心するのではなく、
安心しているから、自然と愛せる自分になる──
そんな逆転の発想に、やっと、触れた気がした。
何度も崩れそうになる心を抱えながら、
僕は、自分自身に、魂に、問いかけた。
「僕は、なぜこの経験を選んだのだろう?」
「この痛みの先に、何を見つけたかったんだろう?」
答えはすぐには返ってこなかった。
ただ、深いところで確かに感じた。
この問いかけこそが、
僕の新しい旅の始まりだったのだと。
愛は、“一緒にいること”だけじゃなかった
婚約破棄──
結果だけを見れば、それは、失敗だったのかもしれない。
未来を誓ったはずのふたりが、
違う道を歩くことになった。
でも、
あの時間のすべてが間違いだったとは、どうしても思えなかった。
たしかに、僕はあの人を愛した。
不器用だったかもしれないけれど、
真剣に、心を込めて、愛そうとした。
そして、
愛されることの喜びと、
愛されることの怖さ──
その両方を、初めて知った。
別れは痛かった。
裏切られたような気持ちもあった。
でも、それでもなお、
「愛したことそのもの」は、どこにも傷ついていなかった。
僕がこの経験から学んだのは、
愛は「続くかどうか」じゃない、ということ。
どれだけ真剣に、誰かを想えたか。
どれだけ、自分を偽らずに愛せたか。
たとえ結果が別れだったとしても、
その瞬間の真剣さは、
魂のどこかに、確かに刻まれている。
それだけで、十分だったんだ。
今は、そう思える。
魂が学ぼうとしていたこと
あとになって、静かに気づいた。
あの別れは、ただの挫折じゃなかった。
僕の魂が、どうしても超えたかった壁だった。
それは──
「信じることが怖くても、もう一度信じる勇気を持てるか」
「相手を許す前に、自分自身を、すべて許せるか」
「愛が終わったように見えても、魂の成長は続いていると信じられるか」
そんな問いを、僕に突きつけていたんだと思う。
そして、それらは
誰かに教えてもらえるものでも、
正解を調べてわかるものでもなかった。
悲しみの中で、
涙が自然に流れるまで、
痛みを抱きながら、それでも前を向こうとしたとき、
心のどこかに、ふっと静かに灯るような「気づき」だった。
「なぜあんな思いをしなければならなかったんだろう」
そう何度も問い続けた日々。
でも今は、ほんの少しだけ、わかる。
あれは、魂が本当の意味で愛を知るために、
自分で選んだ旅路だったのだと。
それでも、もう一度愛したい
正直に言えば、
まだ怖い。
また裏切られるかもしれない。
また、自分を責めてしまうかもしれない。
そんな不安が、心のどこかに、
まだひっそりと息づいている。
それでも──
僕は、もう一度、誰かを愛したいと思っている。
前みたいに、
自分をすり減らしてまで愛するんじゃなくて。
誰かに合わせすぎて、
自分を見失ってしまうような愛じゃなくて。
今度は、
ありのままの自分を大切にしたまま、
誰かと手を取り合える愛を、築いていきたい。
強がらなくてもいい。
無理に完璧じゃなくていい。
そのままの僕で、
そのままの誰かと、
そっと寄り添い合うような、
そんな愛を、もう一度、信じてみたい。
たとえ怖くても、
たとえ痛みを知っていても。
──それでも、僕は、愛をあきらめたくない。
おわりに|この経験を誰かの希望に変えたい
婚約破棄という出来事は、
僕にとって、人生で一番大きな痛みだった。
でも、その痛みの向こうに、
かけがえのない気づきがあった。
愛すること。
信じること。
そして、自分自身を受け入れること。
どれも簡単じゃない。
何度も怖くなって、何度もくじけそうになる。
それでも──
愛してよかった。
信じてよかった。
傷ついたからこそ、見えた景色があった。
だから今、思うんです。
この経験を、ただの痛みのまま終わらせたくない。
できるなら、
同じように悩んでいる誰かの、
小さな光になれたらいい。
誰かを深く想ったあなたへ。
過去の自分を責め続けてしまうあなたへ。
あなたが流した涙も、
あなたが信じた愛も、
決して無駄じゃない。
どんなに心が壊れそうになっても──
あなたの魂は、ちゃんと、成長しているから。
このストーリーが、
あなたの心に、そっと寄り添う灯りになりますように。
読んでくれて、ありがとう。
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